10分でわかる世界史Bの流れ!近世ヨーロッパ(3)~ルネサンスの文化史~

14世紀のルネサンス文化史

【前回までのあらすじ】(10)中世ヨーロッパの文化

9cのカロリング・ルネサンスによってラテン語による古代ローマ文化が興隆、12cの12世紀ルネサンスによってギリシャ文化を学ぼうという気運がヨーロッパで生まれた。
さて、14cから始まるルネサンスでは一体何が「再生」されるのだろうか?

14cから北イタリアで始まったルネサンスは、次第にヨーロッパ中へと広がり16cまで続きました。

ルネサンスは「再生」という意味で、古代ギリシャ文化・古代ローマ文化を復興させようとした時代なので「ルネサンス」と呼ばれています。

ルネサンスとは何か?

キリスト教が始まって、1300年以上経った14c。
既にヨーロッパではキリスト教の教えが広がって、教会中心的な価値観が蔓延していました。
その価値観とは、神の絶対視です。神を崇高なもの、人間を罪深いものとする見方がありました。

キリスト教では、人間は生まれながらにして原罪を背負っており、その罪を悔い改めるために神に祈りを注いで生き、天国へと行こうとしますよね。

つまり人を下に見るような価値観が中世ヨーロッパでは主流だったのです。

そんな人を下に見るような価値観をひっくり返して、個人の持つ価値観(個性)を大切にしよう!としたのがルネサンスの時代です。

教会中心の価値観から、人間中心の価値観への転換が求められました。

そこで参考にされたのが、古代ギリシャ・古代ローマ文化です。この2つはキリスト教が生まれる前から存在する紀元前の文化なので、キリスト教の影響を全く受けていません。この頃の文化をもう1度探求することで、人間中心の価値観を理解しようとしました。

つまり「古代ギリシャ・ローマ文化」を再生することで、人間の理性や尊厳を探求しようというヒューマニズム(人文主義)が生まれたのがルネサンス時代ということです。

さぁ具体的にルネサンス期の芸術・文化・作品を見ていきましょう。まずは絵画作品から!

ルネサンス期のイタリアの画家・芸術家

絵画については、イタリアとその他の地域の画家を分けて紹介します。まずはイタリアの画家たちからです。

ジョット 1266~1337年

イタリア出身のルネサンス絵画の先駆けで、代表作は「聖フランチェスコの生涯」「ユダの接吻」

聖職者ではない俗人として、教会の壁画に絵を書いたことがルネサンス的です。

ボッティチェリ 1444~1510年

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「ヴィーナスの誕生」

フィレンツェで活躍した画家で、メディチ家の保護を受けて美術活動を行いました。

「ヴィーナスの誕生」「春」が有名。一糸まとわぬ女神のヌードを描いた美術が、キリスト教的には異端でルネサンス的です。

レオナルド・ダ・ヴィンチ 1452~1519年

「モナリザ」「最後の晩餐」など、代表作があまりにも有名ですね。

他にも彫刻・解剖学・科学など、幅広い分野での活躍から万能人と名高いです。

ミケランジェロ 1475~1564年

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「最後の審判」

イタリアを代表する彫刻家・画家

「ダヴィデ像」「最後の審判」などが有名

ラファエロ 1483~1520年

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聖母子像、つまり聖母マリアとその子イエスの絵画を多く残しました。

他にも「アテネの学堂」など古代ギリシャの復興にも尽くした。しかし、わずか37歳でなくなっています。

ルネサンス期のイタリア以外の画家・芸術家

ファン・アイク兄弟 1366~1441年 in Netherland

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「アルノルフィーニ夫妻像」

ネーデルランドのフランドル地方の画家。兄はフランドル派という写実的な絵を書く流派の代表格。また弟は油絵で絵画を書く技法を確立しました。

上の絵も、油絵で書かれています。犬の毛のふわっとした感じや、夫妻の着物の質感など、まるで写真のような絵ですよね。これがフランドル派が写実的と言われるゆえんです

デューラー 1471~1528年 in German

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「四人の使徒」

デューラーの代表作「四人の使徒」。こちらもかなり写真に近く、本当に使徒たちがそこにいるかのように見えますよね。

ブリューゲル 1528~69年 in Netherland

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「農民の踊り」

フランドル地方の画家でフランドル派

ブリューゲルは油絵で、フランドル地方の農民たちの様子に焦点を当てて写実的な絵をたくさん書いています。これまで貴族や宗教画が多かったのに、農民を描いたことがルネサンス的です。

ホルバイン 1497~1543年 in England

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「エラスムス像」

ドイツ出身ですが、後にイギリスの宮廷画家になります。

イギリス王ヘンリ8世、トマス・モア、エラスムスなど多数の有名人の肖像画を書いています。

ルネサンス期の建築家

ブルネレスキ 1377~1446年

ブルネレスキは、イタリアのフィレンツェにあるサンタ・マリア大聖堂の大円蓋を設計し完成させました。

当初、サンタ・マリア大聖堂の大円蓋(ドーム部分)は穴が空いていて屋根がない状態でした。この屋根をつける建築家を探すにあたって、コンペを実施して白羽の矢が立ったのがブルネレスキです。

彼の建設した美しい二重構造の円蓋はルネサンス様式と呼ばれ、その後の建築様式の主流になります。

ブラマンテ 1444~1514年

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イタリアの建築家で、老朽化したローマのサン・ピエトロ大聖堂の修繕を請け負った最初の人。

ブラマンテはサン・ピエトロ大聖堂の改築にあたり設計図を作るも、工事が進まず死去。その後、ラファエロやミケランジェロなど名だたる建築家が工事に携わりました。

ルネサンス期の文芸作家

ダンテ 1265~1321年

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ダンテの代表作として「神曲」が有名です。

「神曲」は当時の正式な書き言葉であるラテン語ではなく、話し言葉(方言)であるトスカーナ語で書かれていることが特徴的です。この「神曲」には古代ローマの詩人ウェルギリウスが登場します。それほど古代ローマ文化に入れ込んでいたということですね。

他にも、国家は教会から独立すべき!という本も書いており、ルネサンスの代表的な先駆け的存在ですね。

ペトラルカ 1304~74年

代表作は「叙情詩集」。「カンツォニエーレ」とも言います。

ペトラルカは古代ローマ・ギリシャ文化の多くの古典作品の研究を行ったことがルネサンスに大きく貢献しました。古代ローマの文筆家・政治家であるキケロの作品に倣いラテン語を整備しました。

キケロといえば、美しいラテン語を書いたことで非常に有名でしたが、政治家としての評価はイマイチです。。。

ボッカチオ 1313~75年

代表作は「デカメロン」。非常に覚えやすい名前(*´∀`)

黒死病ペストから逃れた10人の男女が失敗談や恋愛話を自由にする物語。そこに描かれる人々の描写があまりにも赤裸々で個性的で近代小説の原型と称されています。またの名を「人曲」

チョーサー 1340~1400年 in England

イギリス=ルネサンスの先駆け。

代表作「カンタベリ物語」はボッカチオの影響を強く受け、カンタベリ聖堂の巡礼者が語る話をまとめたもの。

エラスムス 1469~1536年 in Netherlands

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ネーデルラント(現オランダ)出身で16c最大の人文主義者。

代表作「愚神礼賛」は、愚女神が聖職者や王侯貴族の腐敗・偽善を民衆に説く内容。教会批判を行ったことがルネサンス的だが、あまりにも過激なので何度も発禁になっています。

またエラスムスは次回解説する「宗教改革」に大きな影響を与えた人物でもあります。

トマス・モア 1478~1535年 in England

代表作「ユートピア」では、現実ではなしえない理想社会を描いて、社会を風刺しました。特にイギリスのエンクロージャー制に対して批判的で「羊が人間を食べている」と表現しました。

実はネーデルラントのエラスムスとの親交が深く、「愚神礼賛」はトマス・モアの家で書かれたのです。

最期は、ヘンリ8世の離婚問題を批判したため処刑されてしまいます。

ラブレー 1494~1553年 in France

フランス=ルネサンスの代表的作家。「ガルガンチュアとパンタグリュエルの物語」が有名で、2人の巨人の豪快な物語になっているが、カトリック教会・修道院に対する批判や卑猥な表現が満載で発禁処分となりました。

モンテーニュ 1533~92年 in France

フランスの思想家で、代表作は「随想録」。

人間の性質についてモンテーニュ自身の観察眼から語る本で、本当の人間の姿について読者に考えさせる内容となっています。「人間」に焦点が当てられており、非常にルネサンス的です。

セルバンテス 1547~1616年 in Spain

スペイン文学史上、最大の作家の1人。

代表作「ドン・キホーテ」は、自らを伝説の騎士だと思い込んだドン・キホーテが旅に出て勘違いなことばかりする滑稽な物語。

著者セルバンテスは、当時のレパントの海戦に参加して左手を負傷しています。

シェークスピア 1564~1616年 in England

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イギリスを代表する劇作家。「ヴェニスの商人」「ハムレット」「ロミオとジュリエット」など代表作は数多いですね。有名すぎて、テストではあまり出ませんが。。。

ルネサンス期の科学と技術

ルネサンス期は大航海時代とも重なる時代なので、航海と関連する科学が多数発達しました。

コペルニクスの地動説

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古代ローマのプトレマイオスが唱える天動説が当時のキリスト教社会においては通説で、多くの宗教関係者が天動説を信じていました。

しかしコペルニクスは、長年の天体観測にて、地動説の方が正しいことに確信を得ます。しかし、キリスト教社会の常識をひっくり返すことは、異端認定されて迫害を受けるリスクがあったため、コペルニクスは地動説の公表には慎重になり、初めは公表しない予定だったようです。

しかし弟子らに説得されたコペルニクスは、地動説の出版を決意します。

当然天動説は、多くのキリスト教関係者から異端認定されましたが、コペルニクス自身は初版出版時には既に亡くなっています。彼に対する迫害はなかったのです。

1543年に公表された地動説が、キリスト教社会に受け入れられるようになったのは、17世紀の科学革命を経た、18世紀のことだったそうです。多くの人々の常識を覆すには200年もの歳月を経て、何代もの世代交代を待たなければならなかったということです。世の中簡単には変えられないという悲しい現実です。
ちなみにこの地動説から、これまでの物事の見方が180℃変わってしまうことを「コペルニクス的転回」と言います。カッコイイので知っとくといいでしょう

他にも地動説を支持した人物は多く、ブルーノガリレオ=ガリレイなどがいます。2人とも、コペルニクスの死後に生まれた人物なので、当然宗教裁判にかけられ異端として迫害されています。

ルネサンス期の三大発明

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三大発明といえば、羅針盤・火薬・活版印刷ですね!いずれも中国で発明されて、それらがイスラーム商人を通じてヨーロッパへともたらされています。

羅針盤の発達のおかげで大航海時代が始まり、火薬のおかげで鉄砲が生まれてこれまでの戦術が大きく変わり、活版印刷のおかげで本の印刷のスピードが上がり知識が幅広く普及しました。

活版印刷は中国とヨーロッパ、ほぼ同時期に開発されたとも言われており、ヨーロッパの発明者はグーテンベルクです!活版印刷は聖書の大量印刷にも繋がり、後に宗教改革としてルターに利用されたりもします。

10分でわかる世界史Bの流れ!近世ヨーロッパ(4)〜ルターから始まる宗教改革〜

2016.06.10

5 件のコメント

  • 世界史の流れを復習するにあたって大変重宝しております。ありがとうございます!

    突然で申し訳ないのですが「ルネサンスの文化史」の項目にてダンテの「神曲」が「新曲」と間違っていますので、ご都合の良い時に誤字訂正の方をよろしくお願いします。
    コメント失礼しましたm(_ _)m

    • 早速修正いたしました。受験生のありがちの凡ミスをしてしまい、いやはや、予測変換というのは恐ろしいものですね。
      ご丁寧なコメントありがとうございます。ユーザーさんからの、ご指摘がサイトを強くしているなと日々感じております。感謝しています。

  • すごく分かりやすくて毎日読ませていただいてます!
    ありがとうございます。
    突然で申し訳ないのですが、「近世ヨーロッパ(3)」のタイトルが「中世ヨーロッパ(3)」となっていると思うのですが、もし間違いでしたら、ご都合のよい時に訂正の方をお願いします。
    失礼いたしました。

    • コメントありがとうございます!嬉しいお言葉ですね。
      一番上の画像ですね!訂正しておきます!

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