10分でわかる世界史Bの流れ!古代ローマ文明(3)〜経済格差と内乱の1世紀〜

古代ローマの経済格差が起こした内乱

【前回までのあらすじ】(2)ローマとカルタゴの名勝負

ローマとカルタゴ間のポエニ戦争は全部で3回も行われました。途中、休戦を挟むものの前264年から前146年まで、実に118年間も戦争を行っていたのです。
長期の戦争に駆り出された多くは重装歩兵を構成していた豊かな農民たちでした。
彼らが戦争にかまけていた間、農地はいったいどうなってしまうのでしょうか?

今回は古代ローマの内乱の1世紀を起こした成因と起こした結果について解説していきます!

最高に効率的な農業経営、ラティフンディア

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カルタゴとのポエニ戦争に勝利し、シチリア島など多数の属州を手に入れた古代ローマですが、戦争によって長きに渡る繁栄に歯止めがかかろうとしました

ローマはカルタゴと100年に渡って戦争してきましたが、その戦争の担い手は重装歩兵という平民出身たちでした

彼らは自分の農地を耕すことが本来の職業でしたが、ほとんど戦争に駆り出されていたため農地は手入れがなされず荒れ果てていました。再び農地を耕す気力がない農民たちは、農地を売ることで生活費を捻出し始めます

この農民が手放した農地を次々と買い取ったのが、貴族たちです

貴族たちは、農民たちが手放した農地を大規模に買い取って、大土地所有主となりました。

そして買い上げた広大な土地で、奴隷を用いて大規模農業を行うようになりました。この大土地経営のことをラティフンディアといいます

広大な土地で、奴隷を酷使して農業を行うというのは非常に効率がよく、多くの農作物をローマ市場に送り込みました。
農地を手放さず頑張っていた中小農民たちも、貴族のラティフンディアの生産効率に勝てるはずもなく、次々と農地を売り払いました。

こういった規模の経済に負けて、中小農民たちは土地を手放させられ、没落を余儀なくされました

没落中小農民の遊民化

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そんな没落した中小農民たちは、農地での仕事はもうありません。全ての農作の仕事は、戦争によって勝ち得た多数の奴隷がやるからです

しかたがないので、中小農民たちは仕事を求めて都市へと向かいました。彼らは一応ローマ市民であるがゆえに、食糧には困りません!

なぜなら、ローマは富める国です。属州シチリア島などから穀物は多数送られてくるため、パンも作り放題で無料で提供されたりもしました。

そして働かずして食べていくことが出来る農民たちは次に娯楽を求めます。これが没落中小農民の遊民化です

ゆえに古代ローマでは劇場、コロシアムでの殺し合いなど見世物が発展しました

都市へと向かったローマ市民たちは、「パンと見世物」を要求するようになったと古代ローマの風刺詩人は嘯きました

グラックス兄弟の貴族に対抗する改革

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こうして中小農民が没落していくのは、ローマとしては非常によろしくないことでした

なぜなら、ローマの経済を支えていたのは戦争だったからです。

戦争によってイタリア半島外から穀物を輸入したり、支配地域から徴税したり、奴隷を多数引き連れて農業をさせたりと・・・本当に戦争によって国家が成り立っていたようなものです

しかし、その戦争で勝ち続けるための鍵は中小農民たちによって構成された重装歩兵軍です

そんな中小農民たちが没落して遊民化して戦争に参加できなくなっていくと、勝てる戦争も勝てなくなります。
国家繁栄のためにも中小農民の没落を改善しなければ!と立ち上がった政治家が、グラックス兄弟です!

グラックス兄弟は中小農民たちが再び自分らの土地をもつ自作農にして繁栄してもらい重装歩兵として頑張ってもらおうと奮闘します

グラックス兄は、前133年に護民官となりラティフンディア制のもとで広大な土地を持つ貴族から土地を没収し、中小農民たちに再び分け与える政策を打ち出します

この政策は貴族のラティフンディアによる独占的な儲けを制限する政策であったため、グラックス兄は貴族から構成される元老院側に殺され、死体を川に捨てられました

兄の思いを継いだ弟が十年後、再び護民官として政策実行しようとしますが元老院側が再び大反対し、最終的にグラックス弟は自殺します

護民官側の決定は神聖不可侵で元老院側に対し拒否権を持つと前494年の聖山事件後に決まりましたが、実質お金を持った貴族に構成される元老院の力のほうが強かったわけです

グラックス兄弟の改革は失敗し、この後のローマは内乱の1世紀に入ります

マリウスが変えた、ローマの軍制

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さて、グラックス兄弟の中小農民と貴族間の経済格差を縮める政策は失敗に終わりましたが、依然としてローマ全体には重装歩兵の穴を埋める「軍事力の確保」の問題が残っています

その問題を解決したのが、平民派のマリウスです

彼は将軍として活躍した後、執政官(コンスル)となり没落した中小農民たちに武器を貸し与えて重装歩兵の穴を埋めました

グラックス兄弟は、武器を再び得るための経済力を無理やり与えようとしましたが、マリウスは、そんな遠回りはせず直接武器を貸し与えました

しかも中小農民たちに与える武器は、ほぼ全てマリウスの私費で賄われました。将軍出身のマリウスらしい、直感的でまっすぐな政治であったと言えますね

彼の軍制改革は、軍事力の拡大に繋がり大成功であったといえます

ローマ最下層の不満が爆発した内乱の1世紀

グラックス兄弟の改革失敗後の前1世紀の100年間を内乱の1世紀と呼びます。ローマの繁栄の基礎を構成する同盟市や奴隷たちなど最下層の人間たちがついに反乱を起こしたのです

前91年〜前88年には同盟市戦争が起きました

分割統治の最下層である、イタリア半島の同盟市がついに不満を爆発させてローマ市民権を求めて反乱を起こしました。これに対して元老院は仕方なく同盟市にも市民権を認めました

また、前73年〜前71年にはスパルタクスの反乱が起きました

これは剣奴というコロシアムで殺し合いをさせられていた奴隷スパルタクスが起こした反乱で、10万人の奴隷が集合する大規模反乱でしたが、後の三頭政治の二方ポンペイウス、クラッススに鎮圧させられます

内乱の1世紀で同盟市の市民には権利が認められましたが、奴隷には権利が認められなかったのが特徴的です

さて一人一人の戦闘能力は最強であるはずの剣奴を抑えた、ポンペイウス、クラッススらは何者なのか?

それは次の記事でご紹介いたします!

まとめ

1. ポエニ戦争という長期の対外戦争で、中小農民たちが重装歩兵として戦争に駆り出され農地を売り出す
2. 売られた農地を貴族が買い取り、奴隷を働かせて大規模農業を始める=ラティフンディア
→没落中小農民の遊民化。これに対してグラックス兄弟が改革を行うも失敗。。。重装歩兵の代わりに私兵化が進む

その後、内乱の1世紀
同盟市戦争や、スパルタクスの反乱など身分の低いものが内戦を始める
→同盟市の市民に権利が認められるも、奴隷は認められず。。。